Special

10月27日(金)発売 Blu-ray Box vol.2特典
特製ブックレット収録:桜美かつし監督インタビュー(一部抜粋)
第4話で「ジジイ、カッコいいじゃねえかよ」という
ところまで持っていければ、
行けるんじゃないかと思ってました。

——まずは参加経緯から伺いたいんですが、J.C.STAFFの松倉(友二)プロデューサーから話があったそうですね。
基本的にここ最近は、仕事が切れずに続いているので、これの前に『Lostorage incited WIXOSS』をやっていたときかな。
松倉くんから「これ、読んでおいてよ」みたいな軽いノリで、原作を渡されて(笑)。
すでにシリーズ構成の髙山(文彦)さんの方でシナリオ作業は進んでいて、第1話はほぼできあがってる状態だったと思いますね。

——原作はご存知だったんですか?
僕は普段、ほとんどマンガを読まないので、全然知りませんでした。
松倉くんは「古き良きSFっぽくないですか?」って言ってたんですけど、僕のなかではあまり「SF」という感じはなくて。
冒頭でこそ超能力バトルがありますけど、基本は、人の形をした女の子らしきキャラクターが不思議な力を持っていて、その子が人になるっていう話なんだろうな、と。
「早く人間になりた〜い!」じゃないですけど、どちらかと言えば『妖怪人間(ベム)』なんじゃないの?というか(笑)。
特に後半の展開に関していえば、SFというよりも哲学的な要素の方が強いんじゃないかな、と。そういう印象でしたね。

——では、原作のどこに魅力を感じたんでしょうか?
アニメによくいるようなダメな大人じゃなくて、昭和の頑固オヤジというか、真っ当な大人が子供を守る。そこに尽きるかなとは思います。
やっぱりアニメにしようと思うと、どこか歪んでるヤツがヘンなことをやったり、あるいは特殊能力を持ってるとか、妙に陰があったりとか。
そういう現実世界にはないようなバックボーンを持った大人が出てくるわけですけど、『アリスと蔵六』はそうじゃない。
逆に言えば、アニメファンに刺さるかといえば「難しいんじゃないか?」とは思いました。
これが面白いかどうかというと、自分のなかではハテナマークだった(笑)。

——あはは(笑)。では、面白くなりそうだなという手応えを感じたのはどのあたりだったんでしょうか?
決定的だったのは、第4話じゃないですかね。
あのエピソードで「ジジイ、カッコいいじゃねえかよ」っていうところまで持っていくことができれば、行けるんじゃないかな、と。
蔵六って、紗名を守ろうとしてはいるんですけど、見方によっちゃ、ただの偏屈ジジイにしか見えない可能性があるんです。
見ず知らずの子供に街中で説教をかまして、頭にアイアンクローをかましてるわけで、今の世の中だと下手をしたら、児童虐待で通報されかねない(笑)。
そういう意味で言えば、蔵六の説教が初めて紗名に届くのが第4話だと思うんですよね。

——なるほど。第4話が肝になるだろう、と。
そこは、脚本の段階から感じていて。ここさえクリアしておけば、次の第5話はほとんどエピローグみたいなものなので(笑)。
紗名が可愛ければなんでもOKだろうと思えたので、やっぱりメインは第4話なんだと思いますね。

——第4話といえば、紗名が泣き出すあたりの盛り上がりも素晴らしかったですね。
(紗名役の)大和田(仁美)君の泣きの芝居がいい感じにハマったというのもありましたし、コンテの段階からすでに超重要カットと書いてありました。
作ってる側からすると、あのカットが上手く行けば、その前後の5カットくらいがヘタレててもなんとかなる(笑)。
やっぱり、それくらい“外しちゃいけないカット”っていうのはあるんです。
ただ、その一方で「早く終われ!」という気持ちもあって。
なぜかというと、対面の席にミニーCが座ってるんですよね。なんで君は黙って、ふたりの会話を聞いてるんだっていう(笑)。
だからああいう長いカットはちょっとドキドキするんですよね、もう持たないかも……と。

——なるほど(笑)。内容については後ほど、また詳しく伺いたいんですが、まずは脚本作業についてお聞かせください。先ほど、すでに脚本は進んでいる段階で、桜美監督が入られたという話でしたが……。
この前に『Lostorage incited WIXOSS』をやっていたこともあって、松倉くんが気を遣って「ちょっとこっちで揉んでおきます」みたいな感じだったんです。
あと、シリーズ構成が髙山さんなので、僕が会議に出ても、言うことを聞いてくれるわけがない(笑)。
なので、とりあえずシナリオを上げてもらって、コンテを描くときにこっちで考えよう、みたいな感じではありました。

——桜美監督と髙山さんは以前、『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』でもタッグを組まれていますね。監督から見て、髙山さんはどういう脚本家ですか?
とにかく、演出家に強要する脚本家ですね。髙山さん自身が、自分で演出できるっていうのもあるんですけど、脚本を読むと「こうしろ」っていうふうに書いてある。自分が「やりたい」と思ってるところのディテールは、すごく細かく書き込んであるんです。

——どういうふうに演出するかが、すでに脚本にしっかりと書き込まれている。
『アリスと蔵六』でいえば、やっぱり第1話の冒頭、Aパートでしょうね。
ミニーCと一条さんが戦闘にいたるまでの流れ——それこそ監視カメラに水滴がついてて、稲妻が光って……みたいなあたりは、すでに脚本に書かれています(笑)


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